ALONGU 明論具

大陸世界の最も東側に位置する日本という場所は、文化伝承の旅路の終着点でもあります。なかでも食においては、多様な様式を受け入れ、アレンジし、日本独自の食文化を作り出してきました。そして、その変容と活用はまさに今も続いていると感じます。さまざまな国籍性や地域性が混在する和食の現在地を楽しみ、未来の和食を兆す器の姿を模索し、そのコレクションに「ALONGU 明論具」という名をつけました。

Product Design: JIN KURAMOTO STUDIO
Art Direction & Design: Ray Masaki (RAN)
Nagasaki Photography: マ.psd
Food Photography: Kyogo Hidaka
Product Photography: Junichi Kusaka (Fuse)
Cooking: Tamai Hamamori

様々な国籍の料理に合う器

ALONGU 明論具は近代アジア圏の器様式をルーツとし、底部が肉厚で縁が薄く少し開いた形状をしています。和食器の特徴である高台を備えつつ、低めの高台から器全体がなだらかにつながる形状は、手に持ちやすく、洋食器のように置いて使うシーンにも馴染みます。皿はパスタやカレーなど汁気のある料理も受け止める少し深めの形状に。一方、鉢は少し浅めで、麺類や丼ものに加えて、サラダや炒め物などにも幅広く使えます。  

釉薬のこと

釉薬には装飾や補強など様々な役割があります。
ALONGU 明論具では様々な釉薬の有り様を実験・検証しながら、食卓を彩り、料理を美味しく映してくれる4種類の表情を選びました。 

フチサビ

縁だけに鉄釉を施した表現で、唐津では鯨肉に喩えて「皮鯨(かわくじら)」とも呼ばれます。白色の肌に口縁の黒釉が映える品物。繊細な盛り付けによく合います。

セイジ

大陸から伝わった磁器様式の起点となる存在。「青磁」の文字通り、透明感のある薄い青みが美しく、飽きのこない端正な表情が特徴です。食卓の程よいアクセントになる一品。

テンモク

鉄分を多く含む黒色の釉薬で、その結晶成分が生み出す繊細な模様が表面に現れます。個体差が出るために量産品での採用が難しかった一方、その表情は食卓を個性的に彩ります。深みのある表情が食材の色味を引き立てるので、鮮やかな色合いの料理にもおすすめです。

ヤキシメ

釉薬を使わず、高温で焼き締めた仕上がりの表情です。マットな質感は4種の中で最も洋食器の雰囲気が強く、これからの和食器の姿を示唆する表現です。さまざまな国籍の料理に合わせて使っていただきたい一品です。

ともにつくる、波佐見という場所

ALONGU 明論具が生まれる長崎県波佐見町は、400年前から窯業を行う焼き物の産地です。ここには世界でも有数の大きさを誇る登窯の史跡が残っていて、古くから地域一体となって焼き物を作っていたことがわかります。大きな登窯を使うためには、地域の職人達が協力して大量の器を窯入れし、当番制で火を見張る必要がありました。また波佐見町では山間の斜面に広がる棚田の稲作でも、同じ水源を地域で共有し作物を育ててきました。下から上っていく登窯の火とは対照的に、水田では上から下に協力しながら水を巡らせていきます。古くから地域の人々が力を合わせ、ともにつくる姿勢が現代まで受け継がれている波佐見で、「共に(Along)」という言葉を起点にしたブランド「ALONGU 明論具」を立ち上げました。 

ありのままの魅力

ALONGU 明論具の器は、自然のもたらす釉薬の濃淡によって生みだされる一点一点の異なる表情が大きな魅力です。ゆえに均質性の観点からこれまで「B品」とされてきた存在を生み出さない取り組みを行なっています。全てが均一に仕上がるイメージを持たれやすい磁器製品ですが、実は自然の陶石を原料とし、季節や気候の影響で窯の環境が変化することや、職人の手作業など様々な人の手が関わり生産されており、これまで検品の基準とされてきた「鉄粉」や「釉薬のむら」なども、実はごく自然に発生するものなのです。

ALONGU 明論具では、その素材が持つ魅力と自然が作り出すありのままの表情を活かすために、結晶反応が起こりやすい、表情の豊かな釉薬を積極的に採用し、また木製品も素地の風合いが感じ取れる半透明のブラウン塗装を施しました。小さな点やムラが不良品とされてきたこれまでの当たり前を、これからは一点一点それぞれが持つ魅力として捉えられるように、生産者、購入者と共に新しい感覚を築いていきたいと考えます。 

木材を活かし、最大限の生産を行う工夫

SOUP BOWL は、素材にナツメを使用し、中国工場でろくろ職人の手作業の工程を経て削り上げ られています。木材には「節」や「木斑」 などの木の成長に伴い発生する模様があり、木目の美しい材はクリア塗装に用い、模様の個体差が目立つ材は色のある塗装を施すことで木材の無駄を 最小限に抑えて生産します。さらに、塗装色ごとの生産数量を固定せず、木材の状態によってクリア塗装とブラウン塗装という2色の割合を変動させ、仕入れた木材で出来る最大数を生産することで、資源の有効利用や工場の負担を軽減することを目指しています。

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